技術の本質「ベルバラと設計技術」-設計技術は1日でできるものではない。

先頃より少し時間を与えられて、たまたまテレビの中で、役者の大御所長谷川一夫氏の芸について、ご当人のことばをじっくり聞く機会を得ました。

正直のところ話を聞くまで、宝塚の歌劇なるものは大勢の女性が甲高い声を張り上げる劇で、どうも私の趣味には合わないと、評判が高ければ高いほどいささか意固地に背を向けていた感じでありました。しかし、それが長谷川一夫氏の演出であり、また彼の芸の話を聞くに及んで、なるほどと合点が出来た次第です。

いつでも同氏の考えの中心になるのは、どうすれば「観客に最も美しい形を、楽しんで、喜んで、見ていただけるか」にあります。そこに「経験と計算と懸命の努力によって作られた長谷川一夫の芸(技術)がある」と思います。

「ベルサイユのバラ」なる劇がどんなものであるかは知りませんが、舞台や登場人物のしぐさを美しく、醜いもの・嫌悪されるものを極力少なくして、顧客の気持ちを大切にした同氏の演出を考えるとき、この劇が大喝采を博したことは当然、と思えた次第です。

私共の仕事・設計についても、そのものズバリ全く同じと思いました。もちろん、完全な設計が出来る条件はなかなかに与えられませんが、これはどこでも誰でも同じで、顧客の気持ちになりきって条件を選択し、経験と理論の上に築かれた技術を駆使してこそ、いや懸命にしようと努力するとき、立派な仕事が出来るものと思います。

良い仕事になるように、喜んでいただける仕事になるように常に気持ちの上で、そこに目標をおいて努力するとき、必ず達成される日が来るものと思います。

価値判断にはいろいろあると思いますが、要は自分が向上する方向に考えて見たいと思い、この話を紹介する次第です。

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